
Automotive Innovation Day 2026
Vicor to present innovative benefits of using compact, power dense DC-DC conversion
アクティブサスペンションは、登場して数十年が経った今日でも、高効率の電力供給が大きな課題であり、そのため、搭載される車は高級車に限られていました。近年、48Vへの移行と高電力密度の電源モジュールの活用が広がり、より多くの車種にアクティブサスペンションを搭載するためのハードルが下がりつつあります。
Sine Amplitude Converter™電源モジュールは、双方向変換ができ過渡応答が速いという特徴があり、アクティブサスペンションの新たな可能性を切り拓きます。
アクティブサスペンションは古くから高級車の代名詞でしたが、今日では手の届く範囲のプラットフォームにも、広く使われ始めました。
しかし、この普及には、これまでの業界標準よりはるかにフレキシブルで応答性能の高い車載電源アーキテクチャが必要です。
大まかに言うと、サスペンションの制御には、電流を双方向で瞬時に切替えることができ、高速な過渡応答が可能な電源システムが必要です。電流の反転と瞬時の電力供給ができないシステムでは、路面から衝撃を受けたときに車体を安定させることと、リバウンド時にエネルギー回生することは困難です。
残念ながら、レギュレータタイプのDCDCコンバータとバッファ用蓄電器と、12Vレールを中心に構築された従来の電気制御システムでは、重量やサイズを大幅に増やさずに、サスペンションアクチュエータの電源に求められる速い変動に応えられません。
一方、Vicor のSine Amplitude Converter (SAC™)の技術を採用した電源モジュールは、双方向変換が対称的に動作して電流の向きを変える時に余分なプロセスがなく、負荷の変動に対して遅延のない電流供給が可能です。瞬時の電流の方向切替えと、高速な過渡電流供給の両方の課題が解決できます。
その結果、電力供給システムは、従来の電圧レギュレータと異なり、電圧の範囲を拡張したバッテリーのような動作が可能になります。
サスペンションアクチュエータは、負荷と発電機の両方の働きをする、数少ない車載サブシステムの一つです。路面からの衝撃でリニアアクチュエータが収縮する際に流れ込む電流の向きは、わずか数ミリ秒後、アクチュエータが反発して運動エネルギーを回収するときに、反転します。基盤となる電源システムが双方向性を備えることが極めて重要である理由はここです。電流の反転が素早くスムーズにできるコンバータがなければ、回生エネルギーの大部分は無駄になるか、抵抗負荷を通して熱として消費されることになります(図1)
SACベースのコンバータの動作は、本質的に双方向の変換動作が対称的です。共振スイッチを使った固定の電圧変換比で動作し、明示的な制御ロジックを必要とせずに電流の反転が可能です。制御ピンの切り替えも、マイコンによる介入も、ソースとシンクの切替えを定義するソフトウェアも存在しません。
これは、この方式のコンバータ自体の物理的特性によるものです。エネルギー回生によって低電圧48V側の電圧が上昇すると、コンバータはその変化を自然に高電圧側へ反映させます。つまり、生じる電圧がバッテリーのレール電圧を上回ると、電流は上流へと流れます。逆に、サスペンションが電力を消費すると、コンバータによってバッテリー電圧は降圧変換されます。コンバータの構成を変える必要はありません。このようにして、一つのコンバータで電流を双方向に途切れなく流すことができます(図1)
図1: Vicor のBCMモジュールを使い、入・出力間で遅延がなく双方向変換する、実験室テスト
一方、従来のレギュレータタイプのコンバータは、本来双方向変換はできません。こうしたシステムでは双方向変換の機能を作り出すため、昇降圧コンバータの並列接続や二系統のレギュレータを使いますが、そうすると部品数、基板面積が増え、システムが複雑になります。また、このようなアーキテクチャは、電流の反転を能動的に監視して、ソフトウェアやアナログ制御ループを介して応答することで安定した出力を確立する、という極めて煩雑なプロセスで動作します。その間、回生エネルギーは消失するか、近くのバッファ素子へ流れることになります。この時間遅延によりシステム全体の効率が低下するだけでなく、部品点数が増えるためサイズと重量が増えシステムは複雑になります。
双方向変換ができるSACの電源モジュールを使うことで、これら全てを回避できます。SACモジュールは、瞬時に自律的に動作するため、システムを複雑化せずに高効率でエネルギーの回収ができます。具体的には、これまで電流の向きを制御をしていた専用回路やファームウェアを無くすことができます。また、よけいなコンバータの経路や電流センサーも不要になります。
結局のところ、この双方向変換の機能はコントローラで制御された動きではなく、コンバータが応答する受動的な挙動なのです。
この特性は、アクティブサスペンション以外にも有意義です。ステアリングアシスト、回生ブレーキ、シャーシレベリング、ヒートポンプの逆流のような、電流が双方向に流れるあらゆるサブシステムがこのシンプルな双方向システムの恩恵を受けます。このように双方向SACモジュールを使うことで、これらのサブシステム間で電力フローの設計を統一することができ、車両内のゾーン毎の電力アーキテクチャが複雑にならずに済みます。
高速な過渡応答性能は、アクティブサスペンションにとって欠かせない二つめの要件です。サスペンションシステムは、路面からの速い機械的入力に対し、時には数マイクロ秒で反応する必要があります。このような状況では、電源システムは、タイミングの遅れや電圧降下、オーバーシュートを発生することなく、電流を供給・吸収できる必要があります。
SACモジュールを使うと、この応答性能を実現できます。SAC方式の電源モジュールは、共振スイッチの動作周波数のポイントで、コンバータの出力インピーダンスが極めて小さくなります。これにより、8メガアンペア毎秒を超える高い電流スルーレートが実現します(図2)。
図2:Vicor のBCMモジュールのテストデータ。Sine Amplitude Converter™モジュールは、8メガアンペア毎秒を超える高い電流スルーレートを実現します。
特筆すべきは、この性能が出力インダクタやコンデンサのような局所的な蓄電素子を使わずに実現されている点です。SAC™コンバータでは、電圧や電流の変化を滑らかにするためにエネルギーをバッファするのではなく、Q値が高い共振タンクを使います。コンバータの一次側と二次側の間で、高効率で想定通りのエネルギー転送を行います。これにより、出力インピーダンスが極めて低く、位相遅れも無視できる程度の電力パスが実現します。フィルタ回路を使うシステムで見られるエネルギー移動の遅延やオーバーシュートが発生せず、制御システムの指令通りに素早く負荷変動へ対応することが可能です。
この高い応答性能は、電気機械式サスペンションの制御ループにとって大きな利点となります。このようなシステムの閉ループの安定性を保つには、電気的な遅延時間がアクチュエータや車両全体の機械的応答時間より短いことが重要です。電気システムが対応できれば、より積極的なダンピング・アルゴリズムを適用でき、操縦性向上や横揺れを低減でき、路面の窪みや車線変更からも素早く回復できるようになります。
フィルタを使わずに優れた過渡応答性能を実現できることのもう一つの利点は、サイズが小さくなることです。サスペンションシステムで使う電力レベルを扱う場合、出力コンデンサやインダクタは物理的に大きくなり、冷却は困難です。これらを無くすことで、筐体は小型になり、放熱の制約が減り、シャーシ内で配置するときの自由度を高くすることができます。
双方向変換と高速過渡応答を組み合わせることで、新らしい活用方法も生まれます。これらのモジュールは、ファームウェアによる制御に頼らずに電力の向きを反転させて、48V電源から高電圧トラクションバスをプリチャージすることもできます。
双方向の電力フローと高速過渡応答性能を優先して考えると、システムアーキテクチャは劇的にシンプルになります。SACコンバータを採用することで、複数の電源ステージが不要になり、中間バッファとしてのバッテリーやスーパーキャパシタも不要になります。また、昇降圧コンバータの並列や二系統のレギュレータも必要ありません。
従来の構成では、回生電流は駆動電流とは別の電力パスを通り、それぞれに専用のスイッチや保護回路、タイミングロジックが必要でした。SACコンバータを使うと、電圧変換比固定のコンバータ1つで回生電流と駆動電流の両方をシームレスに扱えます(図3)。自動車メーカーには、配線用ハーネスを簡素にでき寄生損失を最小にできるという利点があります。また、制御要素が減り、同期が必要な要素も減ることで、システムの信頼性も向上します。
図3:Sine Amplitude Converterモジュールを使うことで、アクティブサスペンション用電源システムが実現します。バッテリーとサスペンションアクチュエータ間で双方向に電流を流すことが必要です。
構成を改良することで、従来より効果的なシステム組立ても可能になります。SACモジュールは高い電力密度(最大150kW/L)を実現しながら、バッテリーケースやシャーシなどの既存の構造にそのまま組込める、コンパクトで放熱性能に優れた形状です。ケースが平面なので熱的な接触が効率よくでき、内部構造は高密度でありながら熱抵抗が低く抑えられています。
その結果、これらのモジュールの放熱性能はディスクリートMOSFETと同等かそれ以上であり、外付けヒートシンクやエアフロ―の管理のみでキロワットレベルの電力を供給することが可能です。
もう一つの利点がスケーラビリティです。これらのコンバータは固定ゲインで動作し、電流の向きや負荷の種類に応じて構成を変える必要がなく、並列接続することでより大きい電力への対応や冗長化が可能です。これにより自動車メーカーは、1種類のモジュールを自社の全車種のプラットフォームで使うことができます。例えば、クロスオーバー車の軽量なフロントサスペンションにも、商用バンのデュアルモーター式リアサスペンションにも同じユニットを適用することができ、性能の差は設計変更ではなくモジュールの数と冷却方法で対応できます。
双方向変換と高速過渡応答を組み合わせることで、新しい活用方法も生まれます。これらのモジュールは、ファームウェアによる制御に頼らずに電力の向きを反転させて、48V電源から高電圧トラクションバスをプリチャージすることもできます。また、電動ポンプ、コンプレッサ、熱管理システムといった、他の動的で双方向の電力特性を持つアプリケーションを管理する、48Vゾーン配電の重要なパスとしても機能します。
双方向の電力フローと高速過渡応答性能は、アクティブサスペンション・システムをより幅広い車種で展開するために欠かせません。従来の電源アーキテクチャやソリューションと比較したとき、SAC™を採用したコンバータを使うことは、確実でより優れた選択肢です。
現在、SACベースの電源モジュールを大規模に展開しているのはVicorのみです。VicorのBCM®モジュールなどを使うソリューションは、高速な応答、双方向特性、高効率、熱的な堅牢性、そして高電力密度という類を見ない特徴があるため、設計上の新たな可能性が拓けます。SACベースのモジュールを中心に設計することで、より軽量、高速で、エネルギー効率に優れたサスペンション・アーキテクチャを構築でき、同時に統合や拡張も容易になります。このようなソリューションにより自動車メーカーは、技術的、経済的に実現可能な方法で、アクティブサスペンションをより広い市場へ投入することができます。
本記事はPower Electronics Magazineに掲載されたものです。
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